From:宮川徳生
僕が最初に大口の契約をもらったのは
地元の小さな工務店だった。
その工務店は
年商2億ほどのよくある地方の
小さな工務店。
たまに紹介で新築の仕事がくるのと
ほとんどの仕事は大手の下請け大工仕事だ。
ただ、単価は年々下がるなかで
社長の息子の専務が危機感を覚え
相談を受けたことで契約はスタート。
自社で新築をガンガン売っていこうぜ
ということになった。
で、この工務店は
1年半後には年商換算で8億を超え
たった1年半で年商が4倍にまでなった。
僕のキャリアの中でも
本当にうまくいったケースとなった。
が、ある日突然
契約は終わってしまった。
関係性も悪くない。
成果もめちゃくちゃ出ていた。
なのに、なぜ
終わってしまったのか?
社長からこんなことを言われた。
「俺は断熱材の良さをもっとアピっていきたいんだよ」
どういうことか?
当時の僕は
マーケティングやセールスライティングという
武器を手に入れたばかりで
調子に乗っていた。
「売れればなんでもいいでしょ?」
そんな風に
思ってる節があった。
この工務店の社長は
とにかく断熱材愛が凄まじく
着ている作業着に社名ではなく
断熱材の名称を刺繍する程だった。
信じられる?
普通さ、宮川工務店みたいな感じで
胸とか背中にプリントするわけじゃん?
でも、ここの社長は
〇〇断熱材ってプリントをしてるわけ。
家を建てる時の
幕みたいなのも
会社名じゃなくて断熱材名。
ってくらい
断熱材が大好きな社長だった。
ただ、「この断熱材すごいんだよ」なんて言っても
広告の反応は全く上がらない。
なぜなら、断熱材があることで
どこまで違うかなんて素人にはわからないし
断熱材の違いなんて余計わからないからだ。
それに、そもそも
「この断熱材すげー、家買うぞー」
とはならない。
だから、僕は広告から
断熱材を消していった。
断熱材をアピるのではなく
自慢したいというコンプレックスの部分や
みんなにすごいと言われたい承認欲求など
いわゆる感情を刺激する方向で広告を作り
見事それが当たった。
その広告はチラシで展開したわけだが
1万〜2万枚まけば大体家が一棟売れるという
すごい成果に繋がった。
それが1年半ずっと続いたわけだから
相当なヒット広告になった。
だが、ある突然
社長から「こんなんで売っても意味がない」と言われ
契約はあっさり終わることになった。
僕は売ることが正義だと思っていた。
だから、社長が社名よりこだわっている
断熱材要素を面から消し、売れる訴求にこだわった。
しかし、社長は
断熱材の良さで選ばれてるわけではないことに
だんだん違和感を覚えていった。
僕が入る以前のキャッチコピーは
「家は断熱材」だった。
それを僕は
「建売住宅と同じ値段で完全自由設計の家は建つ」
に変えた。
当然、家を選ぶ理由は
断熱材ではなくなった。
この時、なぜ
めちゃくちゃ売れてるのに
契約が終わってしまったのか?
その本当の理由がわからなかった。
というより
「何贅沢言ってんだよ」とさえ思った。
でも、それから10年経ち
僕自身も僕の会社も成長したことで
ようやく断熱材社長の言っていた
『売れればなんでもいいわけじゃない』
という気持ちがわかった。
あなたとコミュニケーションをとってる
このマーケティング事業。
事業拡大のために
定期的にパートナーの募集や育成をしている。
で、いい感じの人には
報酬を払い、仕事を手伝ってもらうわけだが
気づいたら僕も断熱材社長と同じことを言うようになっていたのだ。
ウチに対して提案をしてくれるのはありがたい。
だけど、99%の提案は
「魔法を売りましょう」という提案なのだ。
どういうことか?
要は、彼らが毎回いうのは
これから起業する人は
魔法が欲しいわけだから
・これさえやれば
・誰でも簡単に
・成功できる
・例え知識経験ゼロだったとしても
というものを
大きくプロミスして売りましょうと。
確かに、それはその通りである。
起業マーケットは
そういう訴求で売るのが一番売れる。
それは否定しない。
だが、僕は
その訴求で集まってくる顧客のことを
尊敬できないからやりたくないのだ。
この訴求で集まってくる顧客は
消費者思考が強く
義務と責任を履き違えており
大量行動を受け入れてない
ケースがとても多い。
僕も自分自身で起業し
大きな失敗や痛い目を何度も見て
這い上がってきた経験がある。
そして、僕の周りにいる
僕より格上の社長は
僕以上にどん底を経験していたりする。
だから、僕は起業というのもの
そんなに甘いものではないし
自己責任で大量行動していくものだと思っている。
そうした価値観だからこそ
「誰でも簡単にこれやるだけで成功できるよ」
なんてことは言う気がない。
というか
そんな訴求で売っても意味がないのだ。
僕にとって意味があることは
「起業は甘くないからもっとやることやれ」と。
それを受け入れて
頑張ろうとしている人を
僕は応援したい。
そしてそれをやれた時初めて
この事業は僕にとって意味のあるものになる。
10年経って
僕は自然と断熱材社長と同じことを
言っていたのだ。
そして、10年前
工務店から契約終了を言われた僕と同じように
僕は今そういう提案しかしてこない人との契約はしないし
もしくは終わらせることにしている。
今日の話から何を伝えたいか?
それは
相手の信念やアイデンティティー
ミッションや大義などを無視しては
絶対にいけないということ。
お金を儲けると言うことは
確かに大事なことである。
そして、お金がないうちは
お金を儲けることが最優先になることは
自然なことでもあるし
むしろそうすべきだ。
だが、しかし
お金をある程度儲けた後も
お金だけを追い求めるのはバカのすることだ。
人間死ぬ時に
「俺はいくら儲けたんだぜ〜」なんて
自慢するやつはいないだろう。
そうじゃなくて
死ぬとき思うのは
何を残したか?に違いないと信じてる。
コンサルタントとして
社長の信念の実現に伴奏するというスタンスなのか?
それとも
クライアントの信念は無視して
売上上げればいいんだろ?というスタンスなのか?
あなたは絶対に
後者のコンサルになってはいけない。
後者のコンサルになった先に何があるのかは
今日の冒頭で伝えた通りだ。