2025/06/17

心を動かすのは、いつだって“人”でした

From:長嶋雄二

現在、

VIJの求人支援の事業として
鬼怒川の温泉地をサポートする中で
先日、

「じゃらん」の元編集長を務めていた方と
ミーティングをする機会がありました。

旅館業界を何十年と見てきた方の言葉は、
とても鋭く、でもどこか温かく、
僕自身、深くうなずくことばかりだったのですが…

そんな中、ひとつのエピソードが心に残っています。

それは、ある家族が、旅館に宿泊した際のこと。

チェックアウト後、
お子さんのお気に入りのミニカーが、
部屋にぽつんと置き忘れられていたそうです。

その旅館では、それをただの
「忘れ物」とは捉えませんでした。

スタッフはまず、
そのミニカーがあった場所を写真に撮り、

「あなたの大切な車が、
 こんなところに隠れていました」

と、まるで『かくれんぼ』のような
メッセージを添えて手紙を書いたそうです。

さらに、そのミニカーを丁寧に梱包し、
外箱にはこう書かれていました。

「配達員の皆さまへ
 この箱には、大切なお子さまの宝物が入っています。
 どうか、優しくお運びいただけたら幸いです。」

もう、ここまできたら、
ただの“接客”ではありません。

これは「思いやり」ですよね。

しかも、押しつけがましくなく、
どこまでも自然に、
相手を想う気持ちがにじみ出ている…

「こういうことができる旅館は、
やっぱり選ばれるんです」

と、編集長が静かに語ったとき、
僕は自分にも言われている気がして
ちょっと背筋が伸びました。

いま、全国の旅館や温泉地は、
どこも「人手不足」「若手が来ない」「定着しない」
という課題に頭を抱えています。

でも、この話を聞いて、思ったんです。

たとえば、あなたが就職先を探しているとしたら、
求人票に書かれた
「給与」「福利厚生」「週休二日」
そんな条件だけで決めるでしょうか?

きっと違いますよね。

・この人たちと働きたい
・ここで過ごす時間は、意味がある

そんな“感情”が動いて、
初めて「ここで働いてみたい!」と思える。

だから、採用のスタート地点も、
やっぱり「人」なんだとあらためて気づかされました。

実際、今回ご一緒している鬼怒川には、
「素材」はたくさんあるんです。

貸切の露天風呂も、
地元の美味しい野菜も、
東京からのアクセスの良さも、
決して他に引けを取るものではありません。

でも、それが“選ばれない”理由は何か?

それは「人の思い」が
表から見える形で相手に届いていないからだと
思っています。

例えば、、、

駅に降り立っても、
「どこに行けばいいのか」「何があるのか」
誰にも聞けず、パンフレットもなく、
そのまま何となく歩きだす…

旅館にチェックインしても、
・この土地で何を楽しめばいいのか
・どんな人がいて、どんな暮らしがあるのか
誰も教えてくれない…

そんな状況だとしたら、
ちょっと寂しいですよね。

なぜなら、その地域の
『物語』が語られていないからなんです。

僕たちはつい、
「何を見せるか」「何を打ち出すか」と
「ハード(設備や仕組み)」に目を向けがちです。

でも、本当に人の心を動かすのは、
「どんな思いで、それを届けているのか」
という『ソフト』の部分。

そして、そのソフトを作るのも、伝えるのも
結局は“人”なんだな…

と、改めて気付かされました。

ミニカーを送ったスタッフのように、
「その子が喜ぶ顔を想像する」
「また来てほしいと願う」
そんな気持ちがあればこそ、行動は自然と生まれます。

それは採用もまったく同じ。

ただ応募してもらうための“スペック”を書くのではなく、
「どんな人と働きたいか」「どんな想いで迎えるのか」を、
本音で、丁寧にメッセージの落とし込む。

それが、唯一無二の“求人”になるわけです。

仕事って、やっぱり「人生を作る」選択になります。

だからこそ、

・“地元の魅力”を語れる人がいる旅館
・“お客様を喜ばせよう”と心から思っているスタッフがいる温泉地

そういう場所に、
人は惹かれていくんだと思います。

そしてそれは、
僕たちにも同じことが言えます。

どんなサービスを扱っているか?

それよりも、
どんな人として、何を届けようとしているか?

それを相手に伝えることができたとき

・またお願いしたい!
・あなたと仕事がしたい!

そう言ってもらえるように
なっていくんだと思います。

結局は、『人』から全てはじまる。

それが、すべての原点だと思います。

あなたは、どう思いますか?