
先日、クリニックを経営している知人とZoomで話していたときのこと…
雑談の流れで、ふと彼女がこう漏らしました。
「いやぁ…“常勤医”が本当に集まらないんですよ」
そこから聞いた話が、なかなか衝撃でした。
彼女のクリニックだけじゃなく、全国的にこんな声が上がっているそうです。
・常勤医がそもそも応募してこない
・こちらから打診しても、興味を持ってもらえない
・独立志向の医師ほど、すぐに辞めてしまう
・ワークライフバランス重視の医師から選ばれない
・求人票を出しても、“見られてすらいない”空振り状態
そして、その原因の大きなひとつが…
「医師の価値観が、大きく変わっていること」
だと、彼女は教えてくれたんです。
『昭和の医師 VS 令和の医師』
みたいな構図が、普通にあるんだとか。
昔の医師像って、こんな感じですよね…
・夜中に呼び出されても、当然のように駆けつける
・ 24時間戦えますか、みたいな“使命感”で働く
・有給なんて「取る発想がない」レベル
・家庭よりも、まずは仕事が最優先
ところが今の医師は、全然違うそうです。
例えば…
・夜間オンコールなし
・子育てや家庭との両立が大前提
・有休は「取っていいもの」ではなく「取るのが当たり前」
・過度な責任を、一人に背負わせない働き方
男性医師でも時短勤務だったり、子どもの送り迎えをしてから出勤したり。
昭和世代の先生からすると、
「医者が有給?何言ってんねん…」
という世界観かもしれませんが、若い世代の医師にとっては、それが“普通の働き方”なんですよね。
つまり、「この条件で来てください」ではなく
「あなたの生き方に、どこまで寄り添えます」まで見せられないと、そもそも土俵に上がってくれない、ということです。
で…これって、医療だけの話じゃないですよね。
介護、保育、建設、製造、飲食、旅館業…どの業界でも、若い世代の価値観は同じ方向に動いています。
「給与こんなにあるよ!」
「ガッツのあるやつ来い!」
「根性のある人募集!」
「バリバリ働いて成長できるよ!」
こういう言葉に、昔みたいにワクワクして飛び込む人は、もうほとんどいません。
そうじゃなくて…
・自分の人生設計と両立できるか
・無茶な責任を押しつけられないか
・家族やプライベートを大事にできるか
・そこで働くことに、ちゃんと“納得感”があるか
こうした条件よりも、“生き方とのフィット感”を見ている。
これが、今の採用市場で起きている変化なんですよね。
だから僕は改めて思ったんです。
採用に困っている会社の多くって…
「いい人が来ない」のではなく、「集め方が今の人に合っていない」だろうなって。
常勤医が集まらないクリニックも、介護職が集まらない事業所も、現場スタッフが年中不足している会社も…
多くの場合、「いい人がいない」のではなく、「今の人の価値観とズレている」だけだったりします。
だからこそ、僕ら求人コンサルの仕事は
「会社の都合を押しつける求人」から「今の価値観と会社の想いを翻訳する求人」へ、
完全にシフトしていかないといけないんですよね。
以前、ウチが介護事業所の採用をお手伝いしたときも同じことが起きました。
その会社が打ち出したコンセプトは「尊厳ある介護」。
「とにかく人が欲しいんです」
「うち、離職率高いんですけど…」
といった“こちら都合”の求人から…
「利用者さんの尊厳を守る介護を、本気でやりたい人だけ来てください」
という、価値観を明確にした求人に切り替えた途端、応募してくる人の質も、定着率もガラッと変わりました。
医師の世界でも同じだと思います。
・夜間オンコールなし
・子育てと両立できるシフト
・有休がちゃんと取れる
・チームで責任を分かち合う体制
こういった働き方へのデザインと、
「なぜ、このクリニックは存在するのか」
「地域でどんな役割を果たしたいのか」
というビジョン・コンセプトをセットで見せていくこと。
この2つが揃ったときに、はじめて「選ばれる側」になれるんですよね。
正直に言うと、医師の世界の話を聞いていて、僕はちょっとワクワクしました。
「これ、うちの求人マーケティングの仕組みとめちゃくちゃ相性いいな…」と。
僕らがやっていることは、すごくシンプルです。
・今の人たちの価値観を言語化する
・会社の“コンセプト”を言語化する
・その2つを、求人・採用導線に落とし込む
この構造さえ押さえておけば、応用できるな、という感触があります。
もしあなたがコンサルタントやライターなら…
目の前のクライアントが「人が来ない」「続かない」と嘆いているとき、
・条件を少し上げる
・媒体を変える
・広告費を増やす
だけで終わらせるのか、それとも…今の働き手の価値観を深く理解して、
そのクライアントなりのコンセプトを一緒に掘り起こし、「選ばれる理由」を求人に落とし込んでいくのか。
この差が、これからの“求人・採用に強いコンサル”と“ただ求人を回しているだけのコンサル”の差を決定的に分けていくと思います。
あなたは、どこでこの変化を掴みますか?


