from:甲斐 陽信
デザインに関して、コーチングやレビューをしていると
「表現が発想できない…」
「イメージのアイデアが浮かばない…」
という課題にぶつかる人がたくさんいます。
もしくは
「連想したものを表現したが、少しイメージと違う気がする」
と悩んでいる人も。
そんな時に私が「例えばこんな感じ」と作って見せると
「なるほど」「言われてみれば」「なぜ思い付かなかったんだ」
と膝を打つわけです。
私は今まで、そんな悩みに対して
「経験の違いだけですよ、僕は10年やってますから」
「ひたすら作り続ければ、自然と出来るようになりますよ」
と言ってきましたし、そう思っていました。
でも本当は心の奥で
「なぜ出来ないんだろう」
「なぜ思いつかないんだろう」
「普通に考えれば出てくる発想なのに」
と不思議に思っていました。
なんなら「やっぱり才能が(ry」などという自惚れさえ持っていたかもしれません。
しかし……
トップデザイナーが教えてくれたこと
業界の最前線を走る、とあるデザイナーさんに
こんなことを言われました。
「休んでる? 休むのも仕事だよ」
そう言われた私は「まぁ、そうなんですけどね、分かってはいるんですが…」という反応をしていたんだと思います。そんな私を見たデザイナーさんは、続けてこうおっしゃいました。
「まぁ聴きなさい。体調管理も社会人としての仕事のうち、みたいなことを言うつもりは無いんだ」
「僕らはデザイナーだろ?クリエイティブな仕事だ。こんな仕事をしているわけだから、感性への刺激こそがリサーチであり、技術研鑽の礎になっている」
「同じ情報に触れたとしても、人によって感じ方は違う。君はデザイナーとしての君の感性で物事に当っていて、その全てが作品制作の手がかりであり、引き出しになっているんだよ」
「だから休むのも遊ぶのも、立派にデザイナーの仕事。美術館や博物館だけじゃなくて、ゲームだってアニメだってアイドルの追っかけだって、感性を刺激する大切なデザイナーの仕事だ」
その後もいろいろなお話をさせていただいて「なるほどなぁ」と思ったのでした。
『デザイナー』として生きている自覚
いろんな人に「いちごといえば?」と問えば、
赤い・すっぱい・甘い・練乳・ショートケーキ……
などなど、様々な答えが返ってきます。
3人の人に「犬の絵を描いてください」というお題を出した時、
3人ともが同じ絵を描くことはほとんどないでしょう。
これは、見聞きしてきたこと、好みや性格、生い立ち・感性が人それぞれ違うから起きることです。
僕はデザイナーとして数々の制作をしてきました。そしてそれだけが僕の経験であり、引き出しであると思っていたのです。
しかし本当は、無意識の内に仕事以外の生活の全てを
「デザイナーとしての視点」
で見聞きしていたことを、このデザイナーさんに気付かせていただいたのです。
いちごや犬の絵の例えもさることながら、
ましてや「デザイン制作」ともなれば、身の周りの経験・知識が
より繊細に作品に影響するに違いありません。
「普通に考えれば出てくる発想」なんて、とても独りよがりな考え方で、やはり「デザイナーだから出来た発想」だったのです。
普段から「デザインに才能なんて関係ない。年月を経て築き上げたデザイン理論の完成度こそを、センスというのだ」などとのたまってはばからない僕です。
「才能が無ければ駄目」と受け取られそうで、「感性ですよ」と言うことを躊躇っていました。
でもこれからは自信を持ってこう言えます。
「感性ですよ。普段からデザインに敏感なアンテナを張っていれば、着想できます」
結局才能? いいえ、断じて違います。
こんな風に言っちゃうと
「結局”非デザイナー”には無理なんじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。
セールスライターは【セールスライターの視点】で世界を見聞きし、マーケターは【マーケターの視点】で世界を見聞きしています。
そしてそういった視点って、一人につきひとつだけの視点を持つわけではないのです。
人ひとりに様々な顔や役割があるように、
【野球好きの視点】【歴史マニアの視点】【漫画オタクの視点】【経営者の視点】
などなど、様々な視点を持って生きているはずです。
そこに【デザイン視点】をインストールする。
デザイン表現の発想は、
興味・関心が全く関係ないとまでは言いませんが、
【才能や適正】に完全に依存しているものではないはずです。
デザイナーに資格は必要ありません。
自分のデザインはアイデアが弱い
と悩んでいる方は、自分がデザイナーであると思って生活をしてみてください。
世の中にはヒントやチャンスがゴロゴロと転がっていることに気付くのではないでしょうか。
P.S.
結局、デザイナーとセールスライターの違いはあれど、
この部分の重要性は同じようです。