From:桜井啓太
僕の就職活動は2000年代中盤。この時期は、ずっと就職氷河期と言われていました。
しかし僕の年は、ちょうど小泉首相の時にちょっと景気が良かった時期。だから、割と就活は楽でした。
三木谷社長に会いたくて楽天を受けましたが、結局会えないまま内定が来てしまったり。
英語履歴書を死に物狂いで書いて書類が通ったモルガン・スタンレー証券だったが、次に行った選考で周りの学生が全て「東大・京大・早稲田大・慶応」で、僕は爆死したり…
AppleやIBMの選考にまとめて寝坊したりしていました。いや、笑えないんですけど。
そんな中でも受かったとある企業で、「内定者アルバイト」なるものをやっていたんです。
企画書って何?
そこは新進気鋭のベンチャー企業で、そもそも社員さんがすごい若い。だから「若いけどやれ!」ということで、内定者もガンガン実戦投入されていたようなところ。
そこでは内定者に色々と仕事が振られていました。例えばテレアポをやる人、営業同行する人、メディア構築をする人。そんな中僕は「人材採用企画」なる仕事を与えられました。
「企画書ってどう書くの?」
これが仕事の全容を知った僕の、率直な本音です。でもベンチャー企業だから、たいして指導担当の社員さんとかもいないんですよ。だから聞ける雰囲気というわけでもなく。仕方なく僕は帰り際に渋谷の本屋に寄り、「企画書の書き方」という本を購入したのでした…。
企画ができるやつがいないと大変だ!
あれから10数年が経ち…。
人材採用企画ではなく、インターネットマーケティングをやっております。とはいえ状況は変わらず、「企画書を書く」というのがネックになっていました。
というのも、楠瀬健之のチームは、これまで「勢いでマーケをやる」みたいな風潮があったからです。空(楠瀬さん)からアイデアが降ってきて、それをメンバーで振り分けて実践する。これまではそんな感じで話が進んでいました。
でもやっぱり、それではチームが大きくならないのです。なぜなら、アタマ(頭脳)が1つしかないから。メンバーひとりひとりが、もっと企画を考えないといけないよね、っていう結論になりました。
企画書って面倒くさくないですか?
企画書に限らず、こういう書類って、「カタチだけで中身はない」みたいなことになりやすいです。どの会社も、そういう書類ってありますよね。徹夜で書類をつくることになり、「これに何の意味があるんだ」と泣きそうになることだってあります。
だけど、僕は「企画書」はあったほうがいいと思います。
なぜなら、「思考のテンプレート」になるからです。僕たちセールスライターは、スワイプの重要性を知っています。スワイプが重要なのは、「それに沿って当てはめていけばそれなりのものが完成する」ということです。
とはいえ、スワイプが出てくるのはライティングの場面。インターネットマーケティングでは、それ以前の企画段階、セールスライター風に言うところの「ビッグアイデア」時点で、キャンペーンの成否が決まってきます。
だとしたら、ある程度のクオリティを保てる「企画のテンプレート」があるっていうのは、とても重要でありがたいことですよね。
では、セールスライターの企画書とは?
セールスライティングというよりはインターネットマーケティングの企画書ということができるかもしれません。もちろん僕たちのものよりもっと高度な企画はたくさんあると思います。しかしこの企画書は楠瀬健之チーム内でまずは使っていこうというレベルなので、こんなもんです。
まず、企画書の項目に先駆けてキャンペーンフローを公開しちゃいます。
リリースの前月15日までのミーティングに提出
- 「実践前企画書」を提出する(FBグループへ)
- インターネット広告運用担当やデザイン担当はここまでに決めておく(分からない場合は桜井に相談)
- 広告担当者と協議の上「広告予算」を設定、企画書に記載する
- 必要なライティングは全て終え、その原稿とともに提出
- この時点でプロモーションが実行可能かどうかの審議が行われる
割と早めに企画書提案のタイミングがありますよね。あんまり早く企画をつくっても、「できてるなら出せばいいじゃん」ということになりかねませんので、考えものです。「早めにやる」というのは、逆にスピードを殺すこともあるかもしれません。
リリース7日前まで
- ライティングの再提出や微調整を含め、デザインまで整えて完成させた状態にする
- ミエルカ(ヒートマップ)の分析依頼
- 販売後のプロセスやフォローの依頼
いよいよ期日が迫ってくると、まずは当然のことながら使用するページは完成させておかなければいけません。
それから、「やって終わり」にならないために、分析の下準備もします。そして何かしらの商品を売るわけですから、販売後のプロセスやサポートもきちんと対応しておかなければなりません。
リリース3日前まで
- プロジェクトマネージャーより楠瀬に対して最終確認
この辺で最終判断がトップから下る、ということです。
リリース当日まで
- 広告やメール、LPなどのセッティングを最終完了(担当者自身が権限を受け取って実行)
- 内容や導線の最終確認、最終調整
やってみるとわかると思いますが、インターネットマーケティングはけっこう仕事が多いんです。LPをつくって注文ページに飛ばしてハイ終わり!ではありません。そもそもカートをつくるとか、メールをセッティングするなど、事務的なことはどうしても入ってきます。
リリース中
- 導線を改めて確認 ・突発的なトラブルについては、メンバーサポートだけでなくプロモーション担当者も合わせて対応に走る
「何にしても価値提供が先」という原則からすると、売ればゴールではありません。ちゃんと商品が届けられるのか、何かトラブルはないか。プロジェクト担当者としては、こうしたところまできちんと見ていかなくてはいけません。
リリース終了後7日以内
- 「実践後企画書」を提出する
- 必要があればメンバーサポートチームのフォローに移る
企画が走りきっても、まだ仕事は終わりではありません。マーケターたるもの、「復習」がとても大切です。当初の予定より数字が良かったか悪かったか。そしてそれはなぜか。分析してこそ、次回のキャンペーンに活かせるのです。
企画書の項目は?
それから、企画書の中身も公開してしまいましょう。僕たちは、キャンペーンをはじめるために、こんなことを考えています。
背景
どういう流れからこのプロモーションにつながっているのか?
ターゲットの意識レベル
- 5つの意識レベルのうち、ターゲットはどこにいるのか?
- それはなぜか?
- その意識レベルのターゲットに、どのリードを使うべきか
- それはなぜか?
導線
LPまでどういった流れでアクセスを集めるのか?インターネット広告、クッションページ、メルマガリスト、ターゲットが最もよく見るメディアは?などなど
仮説
このプロモーションを行う上でどういったことが想定できるのか
目的
このプロモーションを行った結果、どういう状態にしたいのか?
ターゲットの感情予測
- 現時点でのターゲットの感情
- プロモーションを経た後のターゲットの感情予測
耳にタコができるほど聞いた言葉。「人は感情でモノを買い、論理で正当化する」。だからとにかく感情。感情、感情、感情!なのです。あなたのセールスレターを読んだターゲットが、いったいどういった感情の変化を起こすのか。それこそが、僕たちの行う仕事です。
実施内容
基本項目
- 広告担当者名
- デザイン担当者名
- 期間
- ビッグアイデア
- 使用予定スワイプ
- 広告予算
広告予算は具体的な数字が求められます。どんな企画も最初に予算を出しますよね。すなわち、セールスライターも広告予算について詳しくなければ、社長にお伺いを立てることすらできないわけです。うちのチームでは、実際はネット広告リーダーに聽いてみることになります。
オファー
- 商品
- 特典・割引など
何を売るのか、どういった割引か、ボーナスは?といったことです。が、忘れがちなのは「締切もオファーの一種である」ということ。期限をきちんと設定し、それに理由をちゃんとつけられるかというのも、セールスライターの腕の見せ所ですよね。
反応予想
- 最大でどれだけの売上や販売数があり得るか
- 最低はどれくらいか
最大と最小を出すというのは、特に社長に対応する時に有効です。ついつい仕事が欲しくて「高めの予想」を伝えてしまいがち。それが達成されなかった時に信頼を失うのはあなたです。最低の数字もきちんと出しておくことで、後からいわゆるクレームを避けることにつながります。
ここまでやる
というわけで、けっこう面倒なんですよね。まずは予測の当たり。「このキャンペーンでどれくらいの売上が見込めるか」っていうのは、なかなか考えても分かりません。
ですがよく考えてみてください。「やってもどうなるか分かりません」と言い出すセールスライターに、社長は広告費を預けたいと思うだろうか、と。
昔、社長だった僕のところへ来る営業マンは、みんなそんな感じでした。それに対し僕の本音は「だったらお前に予算なんて渡せるか!」ということ。言い方は悪いですが、これって世の中の社長は全員同じだと思うのです。
いきなり最初から高い精度で予測はできません。しかし、予測して測定し、振り返る。この一連のプロセスを経験していくしか、精度を上げる方法はないんじゃないでしょうか?
あなたが次にセールスレターを書くときは、ぜひこのような企画をつくってからやってみてください。その方が楽しいですよ。
PS
企画書なんてなくても企画が通りまくり、社長から文句も言われないような関係になりたかったら、これをやるしかないですね。